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最高裁判所第二小法廷 昭和60年(行ツ)161号 判決

岩手県下閉伊郡山田町川向町七番九号

上告人

渡辺孝夫

同所同番号

上告人

渡辺政信

同所同番号

上告人

渡辺永治

同所同番号

上告人

渡辺容子

岩手県宮古市保久田七番二二号

宮古税務署長

被上告人

渋谷典男

右当事者間の仙台高等裁判所昭和五九年(行コ)第一二号相続税異議決定処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和六〇年五月三〇日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由について

本件訴えを不適法とした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。また、記録に照らしても、原審の措置につき違法とすべき点は見当たらない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、いずれも採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島谷六郎 裁判官 大橋進 裁判官 牧圭次 裁判官 藤島昭)

上告人らの上告理由

第一点

一、原判決は憲法第三二条の上告人の裁判を受ける権利を侵害するものであり、憲法の解釈適用を誤つた違法がある。

二、原判決は、出訴期間が待過しているから本訴は不適法として棄却すべきものと判断した。

三、然し、上告人は、昭和六十年五月一五日付で、仙台高等裁判所に「訴の変更申出書」を提出し、被控訴人は控訴状添付の別表四利用区分番号〈1〉乃至〈4〉の財産評価について、明白な客観的な瑕疵があるので無効である―(所得税賦課処分無効確認等請求事件、最高裁昭和五二年(行ツ)第五七号・昭和四八年四月二六日判決、破棄差戻・民集二七・三・六二九登載)との従来の控訴人の主張を援用すると申出たのであるが、これを原判決は無視したのである。

四、無効原因の場合は、出訴期間に制限はなく(行政事件訴訟法三六条)、出訴期間の徒過を理由として棄却した原判決は、上告人の裁判を受ける権利を侵害するもので、憲法第三三条「何人も裁判を受ける権利を侵害するもので、憲法第三三条「何人も裁判を受ける権利を奪われない」のであり、これに反する原判決は憲法の解釈適用を誤つた違法がある。

第二点

一、原判決には理由不備の違法がある。

二、原判決は出訴期間の徒過により本控訴は違法である点だけを棄却の理由としている。

三、然し、前第一点、三で述べたごとく、被上告人の課税処分について、明白な客観的な瑕疵の事実があり無効であると控訴したのであるが、原判決に影響を及ぼすべき無効原因についての判断・理由を遺脱している(民事訴訟法第三九五条一項六号)。

第三点

一、原判決は審理不尽の違法がある。

二、判決に影響を及ぼす被上告人の財産の評価について、明白な客観的な瑕疵があり無効となる原因が存するのであるが、上告人は昭和六十年五月一五日付で、仙台高等裁判所に「弁論再開申請」を提出し無効原因の事実を明らかにするため弁論の再開を申請したのであるが、これを無視したのであり全く審理不尽である(最判 三小 昭和三七・二・二七民集一六巻二号三九二ページ参照)

第四点

一、原判決は憲法三十条に反する、従つてこれを認める原判決は憲法の解釈適用を誤つた違法がある。

二、憲法三十条によれば「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」のであり本件の場合は被上告人の課税財産の評価に無効原因となる明白な客観的な瑕疵があるにも関わらず法律に基づかずに課税されたことになる。従つて原判決は憲法の解釈適用を誤つた違法がある。

以上いずれの点よりするも原判決は違法であり、破棄さるべきものである。

以上

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